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8プレイ ディーラーの危機
「わ〜わ〜」
何人かが先輩のテーブルに人垣を気付き上げる。
ネオンがまだ輝いてそんなに時間がたっていないような時刻だ。
僕のテーブルもまたその人垣に飲み込まれる。
「8」
「10」
プレイヤーは着々と勝っていく。
先輩は普通の顔をしているが明らかに汗ばんだ顔が苦痛を感じている。
先輩はどうしたんだろう?
「チップはバッチでよろしいですか?」
「ああ、かまわないよ。ディーラーさん」
憎たらしい声で、先輩に投げかけられる言葉。
どうやら最後の試合のようだ。
プレイヤーは、8、先輩4。
先輩の手はかすかに震えているように見える。
プレイヤーの出されたカードは・・・8。
6・・・微妙な数字だ。
捲られたそれを見た先輩はかすかに動揺が見えた気がする。
先輩のカードに皆集中される中。捲られた。
8・・・・12・・・2。
せ、先輩が・・・負けた。
多くの人で溢れていた人垣が消えた。
それは、あっけないほどだった。
先輩は、タバコに火を付けた。
「先・・・・ぱい・・・」
声を掛けようとしたとき先輩は僕の横を通り過ぎて含んだ声で言った。
「頑張れよ・・・」
先輩の後ろ姿を見送った。
それから先輩は、ディーラーを辞め・・・・
「お、やりぃ〜悪いね〜ディーラーさん♪」
僕のテーブルでさくらをしていた。
先輩の話によると、あの試合中面倒になったのが半分らしい。
確かに、先輩のテーブルには、多くのプレイヤーが何十人も来ていた。
嫌に成るのも当たり前である。
後半分はなんなのだ?
そしてなぜ僕のテーブルにいるのもどうかと思うんですけど・・・
僕の長い夜もそろそろ夜が明けて来ていた。
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