オリジナル小説へ
9プレイ 持久戦
ネオンがまだ輝くそれはまだ長い夜の序章にしか過ぎなかった。
「へ〜この子が〜」
「らしいぜ」
女の人を連れていちゃつく人は多いけれど、話のネタにされてクスクス笑われるのは
あまりいい気はしないものである。
「では」と声をため息混じりに出そうになったとき男は言った。
「点方式でやろうぜ。兄ちゃん」
他のお客さんが去ったときでもあった。
くちゃくちゃ
ガムの音が耳障りに聞こえる。
僕はため息とも言える声で言った。
「わかりました。では、掛け金をお決めください。」
何人にそう言ったのか分からない。
僕は意外なほどに今日はツイていた。
それが何なのかよくわからない。
「よっしゃ〜兄ちゃん配れや〜」
男の掛け金を確認する。
チップ二枚。
最初は確認程度かも知れない。
僕はテーブルにカードを配る。
男は2、僕は8。
「へへ〜」
ニヤ笑いが誰かを連想させるいや、もっと気品はあったかな?
「とりゃ〜」
その声に開かれたカードは、3。
あれ?僕が先のはず・・・
「もう、なにやってるの〜」
「あははは〜わりーわりー」
僕の開くはずだったカードは、2だった。
気を取り直して再度配った。
男は、6。僕は10。
僕は、カードを広げた。
そのカードは5だった。
男は勝ち微笑んでカードを捲った。
カードは、2を示していた。
「やりー」
「きゃ〜かっこいい」
女が抱きつく。たった一回勝ったくらいで大げさな人達だな〜。
そう思いながらカードを配った。
男は、A。僕は9。
僕がカードを開こうと手に掛けようとすると・・・
「とりゃ〜!」
10のカードが踊る。
「もう、また馬鹿して〜」
「あ、そっか〜焦っちまったぜ」
な、何なんだこの人?
負けそうになったときだけ、順番を間違えてる。
何?カードが見えてるの?
「ディーラーさん、配って〜」
!!??この声は・・・・。
声が聞こえた方に向くと先輩だった。
僕は黙々と配った。
男12つまり2、僕4、先輩9。
男がカードを捲ろうとすると。
「でーあー」
先輩の声が高らかに飛び出し。
「どうだ?」
先輩の手は、11だ。
あっけに取られた状態が少し流れたが僕は思い出したように言おうと口を開けたとき
「なにやってんだよ、にいちゃん。俺が先だろう」
「え?そうなの?わりー」
先輩は、悪そうに口だけで弁解する。
何を考えているんだろう?
そうこう、しているうちに永遠と繰り返される。
男が勝ちそうな手の時は先輩が間違った先出しを。
僕が勝ちそうな手の時は男が間違って先だし。
たまに起こる例外を除いて・・・。
そろそろ閉店時間が近づく。
「これが最後の勝負だな」
「ああ、もう終わりか〜」
意気込む男とちょっと寂しげに言いながらタバコに火をつける先輩。
僕は配るのでだけでうんざりしそうだ。
男の言う意気込みも先輩の言う残念さもない。ただ早く終わって欲しい。
最後に配られた手は、
男3、僕3、先輩3、
こんな偶然あるのか?
こんなときは・・・
先輩に目を向けるとタバコを指にはさみ僕を指し、男を指しそして、タバコを口に咥えた。
僕は、カードを開いた。
8。・・・・11。
僕の勝ちだ!!
この時点で僕の勝ちが決まった。
男が舌打ちをして店を出て行く。
僕は挨拶を慌ててした。
先輩はただタバコを吸う。
ネオンの灯が消える頃僕達の仕事は終わる。
<<BACK NEXT>>