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第十六捜査 盗聴器
気付くとそこは・…病院のベットの上だった。
つぅ・…
あ〜夢だったらどんなにいいかと思ったが夢でなく現実か〜。
峰志の「あいつには気をつけろ」ってこのことかな〜などと考えていた。
ガチャリと扉が開いた。
「気付かれましたか?」
結城だ!でもなんか様子が??
「自分の名前言えますか?」
「勝山克好です。」
何か嫌な予感がして偽名の方を言った。
結城は書き書きと書いていたものを見せる。
〔危ない感じの人がやたらと出入りしている〕
その後俺に紙とペンを貸しながら
「ここがどこだかわかりますか?」
〔多分、そいつ等は盗聴器を仕掛けている。〕
「び、病院?」
〔盗聴器?〕
「そうですね〜。怪我の原因はわかりますか?」
〔恐らくね。困るんだよね〜電波飛ばす奴〕
「あ〜なんか絡まれて…」
〔フロッピーあった?それについて後で聞きたいことが…〕
「記憶に曖昧なところが無いので大丈夫でしょう。何かありましたらナースコールしてください。」
「あ、ありがとうございました。」
そうして、結城は病室を出て行った。
盗聴器か〜、ホント信用無いって言うか…ってか信用されてるのか??
少し周りを見ると盗聴器の場所は時計とコンセットから伸びる延長コード…。
なんのための延長コードか分からないな…。
コンコン
「はい?」
ガチャリと開いてそこには…薩摩が立っていた。
「どうだ、気分は?」
「・…最悪に決まってるっす」
「ははは、確かにな」
「そう思うならこんなことしないでくださいよ〜」
「でも、思った通りこの病院に来れたじゃないか」
「図ったんでしょ?」
「いや…救急病院じゃないからそれなりの措置をしただけ…」
救急じゃない??よく考えたらなんで俺、ここによく運ばれるんだ???
「措置?」
「それより、わかっているな?」
「はぁ?何が…」
そのとき薩摩の拳が俺のみぞおちに入った。
「グフ、ゴホゴホ」
思わず咳き込む。
「キャバレーのママの話だ。分かってるだろう?」
「そのキャバレーのママが…どんな人?」
そう言うと、隠し撮りされた写真を取り出した。
「この女がそうだ。ちゃんと見張るんだぞ」
そう言うとさっさと出て行った。
・…峰志とは大違いの男だ。
さてと、腕だけを狙った意味は分かるけど…もうちょっとお手柔らかにして欲しかったな〜。
そう思いつつ、病室から出た。
まずは、結城にでも会うか〜。
キョロキョロと辺りを見回す。
・・…どこだよここ・…???
何回か入院したことがあるが…その時々の入院したときの病室とは違う…。
・・…広過ぎだ!!!!
「どうなさいましたか?」
ナースが話しかけて来た。
あれ?見たことないな〜。
「自分の病室が分からないんですか?」
「あ、いや、ちょっと散歩しようと思って…」
「じゃあ、私が案内しますよ」
案内・…まあ、このままここに固まっていても仕方がないし…
「お願いします。」
「はい。」
満面の笑みを浮かべる。
なんだか安心できる笑いだ。
少し歩くと目の前から医者の集団がやって来た。
「あれは?」
俺が聞くと
「すいません。ちょっと避けた方がいいですよ」
そう言って廊下の端の方に引っ張られる。
前から来た中心には沙木沢が陣取りカツカツと足音を立てて歩いて行く。
「何の集団ですか?」
「この病院を経営している息子らしいんですけど院長と
違ってなんだかトゲトゲしい人で、お金ばかりに執着する人なんですよ〜」
「ふ〜ん、じゃあ、いつかあの人が院長に?」
「そうなるとこの病院も終わりですね〜」
あの男がね〜。
「ところでお名前をお伺いしていませんでしたね?」
「あ!」
名前を聞かれたときどちらを言うべきか〜と思っていると目の前から結城が歩いていた。
「ちょっと主治医の先生に聞きたいことがあるからここまでありがとう」
俺は、結城を見失わないように走った。
「走らないでください!」
背中からそう言われて、早歩きに変えた。
「結城〜先生」
思わず、先生をつけなければいけない衝動に駆られた。
なんせ、結城の近くには、沙木沢がいたからだ。
「まあ、今日はこれくらいで…貴様は〜あの時の・…」
ゲ、今思い出すのか?
「人違いでしょう?私の担当患者ですよ?」
「ふん、そうか。お前に診られるとは不運だな」
いや、お前に診られた方が…。
沙木沢は、捨て台詞を吐いて去っていった。
「ホントあいつは何様だ。」
「まあ、半分この病院を支配しているからね〜」
結城はそう言った後、沙木沢とは反対側へ歩く。
「で、話ってあれのこと?」
「あれ?」
俺の問いには答えることなく結城は催促するようにそのまま歩きある一室に辿り着いた。
研究室みたいな小さな個室・・…。
「ここ・…」
「あれ?覚えてる?俺のプライベートルーム♪」
「って研究室だろうこれ…」
「まあ、そうとも言う。コーヒーいる?」
「いや、いらない。」
結城は一杯のコーヒーを入れて俺に椅子を勧めて来たので素直に座った。
「あのディスクのことなんだけど…」
「ディスク・…あ〜フロッピーって奴?」
「そう、あれ・…どこで手にしたの?」
「いや、それは言えないけど…」
「あれは、この病院の患者さんの記録だったぞ?」
「はぁ?え?じゃあ、美穂の名前があったのは?」
「当たり前だよ、美穂ちゃんはここに健康診断を受けに来てたんだから。」
「でもそれだけであそこまで分かるのか?」
「まあ、血液で少しまでは…後は、有力候補の人物にそれなりの検査を勝手に進めれば…」
「あのリストが出来ると…」
「まあ・…でもそう考えると…数人の死に疑問が出てくるな。」
「疑問?」
「このリストの中の人で最近死んだ人達は結構不振な死を遂げているんだ。」
「不審な死?」
「しかも、その死に関わってるのは、全部沙木沢の派閥の人だし…
怪しいとは思っていたけど…」
結城が凄く真剣な顔立ちで悩んでいる。
「結城?」
「かっちゃん、今日の夜ついて来て欲しいところがあるんだけど…」
「へ?でも…」
盗聴器のことが気がかりだった。
「そうだよね・…。かっちゃんこれでも仕事中だしね〜」
「これでも?」
結城が何かを言おうとしたとき、PHSが鳴った。
「あ〜ごめん。はい。はい。あ〜それは・・」
俺は、結城が電話しているうちに部屋を出た。
部屋を出たまではいいが…そこから迷子になった。
・……ここはどこなんだ!!
広過ぎて切ねぇ〜。
「あら、勝山さん?」
振り返るとそこには、峰志の妹のまゆみが居た。
・・…そういえば、俺見張るとかなんとか…。
「どうかなさったんですか?」
あまりにも俺が黙っているため不思議そうに小首をかしげる。
「あの…。」
「…怪我をされたんですか?」
急に話が変わって少し理解するのに時間が掛かった。
「え?ああ、俺ドジで…」
まさか薩摩にまゆみを見張るための怪我とは言えないし…。
「そうですか。でも大事なくてよかったですね。」
少し悲しげな笑顔を見せる。
まゆみさん…と声を掛け様としたときナースが声を掛けてきた。
「ごめんなさい。じゃあ、お大事に」
そう言うとまゆみは去って行った。
それが何を意味するのか分からず立ち尽くしていた。
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