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第一の殺人 恋人の死
ざっざっざ、
ただ、ひたすらに夜道を歩く。その足取りは、目の前を歩くサラリーマンを追い越そうとする勢いだ。
目の前のサラリーマンが、宵の口の状態で自分を追い越そうとするものを見る。
ザッシュ。
サラリーマンが最後に見た光景は・・・電灯の光をバックにした人の姿がぼんやりと見えるのだけであった。
ドッサ、
膝を折り前攻めに垂れ込む男の姿を間合いを計りながら見ていた。
さっきまで生きていた男の血の臭いがそこら中に香っている。
男の血がポタポタと垂れる包丁を少しの間、酒でも酔ったようにただ見ていた。
そして、男を刺した包丁をゆっくりと懐にある鞘に直した。
男から徐々に離れていく。
「深夜、サラリーマンのS氏が通り魔により惨殺されました。」
テレビのニュースは、昨夜の殺しについてのニュースで賑わっていた。
ニュースキャスター等がそれぞれの批評を行い、時には、犯人の真意と言っては、
元警察官等がここぞとばかりに批評する。
それを見ては、クツクツと笑う自分が居る。
昨夜血の油に塗れた包丁を研ぐ。
カチャっと軽い音で扉が開く。
「もう、まだこんなところに居た〜」
美弥が駆けてきてじっと、研いでいる包丁に目が行く。
「・・・包丁研ぐの好きだね〜、・・・・そんなことより、早く仕事に来てよね〜」
そういって駆け出して来た道を帰っていく。
研いでいた包丁を光にかざして見る。
血の油で塗れて切れそうに無かったのが鈍いが光を放ち血を求めている様に感じる。
それを懐の鞘に入れ込み、部屋を出て仕事場へ向かった。
仕事場では、やはり、昨夜の話で持ちきりだった。
「なんで、あんなことするんだろうね〜」
「可哀想に・・・」
皆が皆同じことを言う。
その中で、一人だけ昨夜の話を馬鹿にする奴が居た。
「あんなの目立ちたがってんだよ!絶対そうだって」
ゲラゲラと笑うそいつの顔をじぃ〜と見ていた。
オレは、そいつの行動が手に取るように分かる。
そいつが次にどこに行くのか?いつ頃帰るのかもだ。
オレは、そいつを次のターゲットにすることにした。
仕事が終わり、家路に着こうとする。
「ひー君!」
美弥がオレに声をかける。
「包丁研いでばかりいると根暗に思われるぞ〜」
無邪気にそう言って駆け出していた。
あいつがそろそろ家路に着こうとする頃だろうと踏んでそろそろ出掛ける。
通り道になるであろう場所の辺りに自販機があった。
そこに、飲み足りないのかビールを買う奴の姿があった。
オレは、そいつに気付かれぬように後ろに回りこみ、
ザシュ、
奴は、何が起こったのかわからないっと言った顔で居るのが後ろからでも分かる。
奴がオレの存在を見ようと振り仰ごうとするのと同時に、オレは、包丁を抜いた。
血が勢いよく飛び出す瞬間に後ろに退いた。
返り血を浴びることなく男が倒れ崩れた。
ガタ
オレは、振り向くと慌てて逃げる誰かが居た。
・・・・見られた?
オレは、包丁をとりあえず懐に納めて逃げていった誰かの逃げた方向を考える。
カラン
足元には、ジュースが転がっていた。
・・・・・・美弥か?
ハアハア・・・・・
ドア越しに荒い息が聞こえる。
コンコン、
ドアを叩く音が響く。
「美弥?居るんだろう?」
そう呟くように言う。
荒い息が途絶え途絶えになり、唾を飲み込む音が聞こえる。
「なんだ居ないのか・・・」
オレは、引き返す振りをしてその場に居座った。
少しして、ドアが開いた。
ドアの後ろに隠れる。
美弥が居なくなったことを確認しているようだった。
ホッと胸を撫で下ろしている時、美弥の口を塞ぎ包丁で刺す。
美弥の目から涙が流れる。
「美弥を手に掛ける気は無かったんだけどね。ごめんな。」
美弥の口から血が溢れる。
美弥を抱え込むように、そっと美弥の前髪を撫でて上げる。
美弥の目から生気がなくなる頃、オレは叫んでいた。
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