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鍛冶屋
梁は滝に足をとられて妙な流れに乗って渦巻いていた。 多分叫んでいるんだろう・・・いや、助けを求めているのかも知れない。 これも何かの縁だろう。助けるためにお経を唱えた。 水は渦を巻き上に逃げるかと思ったら下へと逃げて行き水はすっかりなくなっていた。 「げほげほ・・・・阿・・・・・臥・・・・・あ・・・・」 咳き込みながら何かを言いたそうだった背中を擦って上げる。 「はあはあ、ありがてぇ〜」 辛うじて息が整ったのだろう。俺はそれを確認して擦るのを止めた。 木々の間から日の光を感じた。 日が昇った。朝になったのか? もし、楊紀が幽霊ならば多分もう出て来れない。 楊紀が何故ここで彷徨っているのだろう?もう一度来るべきだな。 俺はとりあえず飯を食べるために隣の村へと行くことにした。 「阿臥・・・・お供するべ」 梁の明らかに好奇心だけで居る状態が呆れた。 「さっさと帰れ!また危ない目にあうぞ」 「阿臥がいらしゃるんですぜ?大丈夫ですってば! それに、阿臥一人だったら大変ですぜ!倒れたときとか」 ・・・・・確かにあの時は・・・・。言い返す言葉がなくため息を一つして 隣村へと向かった。 そこでは、賑やかに旅人や商人やらがわいわいと会話が繰り広げられている。 とりあえずは食べ物屋を探す。 鍛冶屋では凄い目つきでしだ定めをしている。 ここの鍛冶屋は少しガラが悪いようだな。 ふと見るとさっきまで後ろに居た梁が居ない。 また、どこに行ったんだ?探そうとしたとき・・・ 「なんだと!!そんなわけがあるわけないべ!!」 梁の大声が聞こえた。 何をしているんだ? 呆れるように声の下方向へと向かった。 そこでは、さっきのガラが悪いと思った鍛冶屋となにやら言い合いをしていた。 どうやら、鍛冶屋は梁を獲物と判断したようだ。 「何をしてるんだ。」 そう行って近付いた。本当はため息ものだ。 「阿臥〜。こいつらがおらが商品をバラまいったから弁償しろ言い張るんですわぁ〜」 「バラ撒く?」 怪訝そうに鍛冶屋を見る。 「なんだよ!坊主にゃ用は無いんだよ!去れよ!」 しっしっと怪訝そうな顔で手を振る。 俺は、よく師匠がする慈悲の哀れみと言う奴を実行してみた。 「ああ、哀れなるこの者に祝福あれ、善無きものに幸があらんことを・・・・・」 そして南無阿弥陀仏を繰り返す。 鍛冶屋は嫌な顔で追い出そうとするがそれでも身動きをせずにその場にいた。 「ああ!!分かった分かったからこれはもう並べるよ。これから気をつけろよ!」 そう言ったのを確認して 「この者は善を遂行しました。どうかご慈悲を。」 そしてお椀を鍛冶屋の前に出し鍛冶屋は早く去って欲しいので銭をお碗に入れた。 俺はそれですぐに踵を返して口々に 「ありがたや〜ありがたや〜」と言う。 さすが師匠である気がしてならない。俺ですら横に居てうっとうしくて仕方ない行動だった。 「阿臥!ありがてぇ〜ことで・・・」 「いや、そんなことよりあんなのを相手にしているとこれから生きていけないぞ。」 「へへ〜阿臥にはかなわねぇや〜」 鼻の下に人差し指で擦る。 <<BACK