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第十五捜査 プライバシー
ふと目の前を見るとそこには白い壁・・・いや天井だろう。
「せんせ〜い!!一郎さんが起きられました。」
一郎?誰のことだ?
「分かりますか?ここは病院ですよ。」
病院?は?なんで?
「自分の名前言えますか?」
ふと見ると医者は結城だった。
「あ!かやちゃん、忘れ物したから取って来て貰えるかな?」
そう言ってかやちゃんと呼ばれた看護師に用事を言っているらしい。
そしてかやちゃんは掛けて去っていった。
「起きた?かっちゃん」
「なあ〜一郎って誰?」
そう言ったとき結城は無言で俺を指差した。
「俺?なんで?」
「高波さんがまだ名前は聞いていないってことでそうなっているいわば仮名ってところ
どこかの病院では太郎君とか何故か五郎さんとか呼ばれてるところもあるからな〜
名前ないと不便だろう?」
「そうなんだ」
「ところで名前の件だけどさ〜
森山勝也でいいよね?」
「え?それは・・・」
「大丈夫、患者のプライバシーは尊重してるし、それに仮名じゃ保険利かないよ?」
「保険が利く方で・・・」
「じゃ、そういうことにしとくよ♪」
そう言うとカルテにサラサラと字を書く。
「そういえば、薬使ってたね〜。
発病しちゃった?」
「発病って言うんっすかね?先生。」
「多分」
「笑いながら言う台詞じゃないっしょ!!」
「症状的には何があった?」
「実験材料?」
「そうとも言う♪」
「楽しそうに言うね」
「真面目だよ♪」
ガラと扉が開いて看護師が入って着た。
「先生、忘れ物です。」
「有難う、診断は終わったから・・・
森山さん、一日入院です。」
「わかりました。」
看護師が駆けて行った。
「あ!そうだ。美穂ちゃんがかわいそうだから返事は『行けたら行く』にしておいたから」
「はぁ?何勝手に・・・」
バタンとなりそうなほど勢いよく扉を閉めて結城は出て行った。
ふと見ると置手紙が置かれていた。
その手紙を読むと「着替えと道具は棚の中に入ってます」と書いてあった。
道具?不思議に思って棚を開けるとちゃんと着替えと道具と呼ばれた携帯と・・・・
ガチャ
「かっちゃ〜ん、迎えに来たよ」
・・・・・結城かと思ったらまっちゃんだった。
「え?」
「ほら、ちゃちゃ〜と用意して〜」
「は、はい。」
結城が用意してくれていた棚の服に着替える。道具ももちろん入れる。
「そういえば、よく分かりましたね。ここって・・・」
「俺の情報網舐めたらいかんぞ〜」
「舐めてました」
たはは〜って照れ笑いしているとまっちゃんの拳が見えたので
「俺これでも病人っす!!」って主張して殴られるのを回避する事が出来た。
「ところで、今思ったんですけど・・・俺が眠ってたらどうするつもりだったんですか?」
「・・・・・・そのときはその時」
考えてなかったな・・・。
俺達は、ちょうど面会時間の終わる時間帯のためすんなりと病院の出口から出る事が出来た。
「身体の方は大丈夫か?」
「あ、はい、多分」
「休養を取った方が良くないか?」
「え?いいんっすか?じゃあ、今度の土曜日・・・」
「土曜日?明日か?」
「明日?」
思わずポケットに入れた携帯のディスプレイを見た。
金曜日。
「いいよ。いいよ。あ!でも、夜10時に御園港に来れるなら。」
「御園港?」
「そうだ!そこで船が出るのに乗る。まあ、帰りたいならそれでも構わんが」
「帰る?」
「さすがにあそこで倒れては親御さんにばれているだろう?
静かに治療にあたるのも・・・」
「・・・・・いや、行くよ。」
「いつ帰るかわからんぞ?」
「大丈夫だって、俺これでも運いいし」
「そんな気がするな」
「だろ」
笑いながら俺たちは別れた。
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