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第四捜査 突破口
廃墟ビルにやってきた。 気付いたら寝ていたせいで昼くらいになってしまった。 俺は、ビルの入り口を潜ると垣根が近付いてきた。 「おめぇ〜おせーな!」 「わりぃ〜俺、朝に弱くてさ〜。」 俺は口々にそう言うとふと後ろを振り返った。 さっと隠れる人の姿が見えた。 「な〜おい、さっきそこに人がいなかったか?」 俺は垣根にそう聞いてみた。 「はぁ?気のせいじゃないの?」 そう言った。ふ、気のせいってことにしとくか。 「そうそう、お前も手伝え!」 「は?何かあるんですか?」 「ああ、今日入荷だ!」 「入荷?」 「まあ、こっち来いや」 そういうと垣根は俺が入った方と違う入り口へとやって来た。 「へ〜こんな所に入り口なんてあったんですね〜」 「納品場でもあるんだわ」 納品場と言うだけあって俺が入った入り口よりはいささか広さがある。 その為車の荷台が入り口に陣取っていた。 感じからして此処が本来の入り口だろう。 多分回転ドアが設置されていただろう形跡があったり、元受付の台などある。 結構大手の会社のビルだったことが分かる。 「何してんだ!早く来い!!」 せかされて垣根が呼ぶ方へと行くとちょうど荷台を垣根が開けていた。 その荷台からは・・・・空っぽ? 「垣根さん・・・・何運ぶんっすか?」 「・・・・・・・おかしいな〜」 垣根が困ったように頭をぽりぽり掻いた。その頭からフケがパラパラと落ちてくる。 「垣根さん・・・・お風呂入ってます?」 俺は恐る恐る聞いてみた。 「なんだよ!!俺は入ってるぞ!」 「・・・・・そうっすか・・・」 疑惑の眼差しを向けると垣根の顔が真っ赤になる。 「あの・・・垣根さん?」 言うか言わないうちにぷいと踵を返して後姿になる。 俺は、何も言わずに垣根の後を追った。 「俺・・・・・峰志さんに聞いてくっから此処で待ってな」 後ろを向いたままそう言うとそそくさと行ってしまった。 う〜ん。悪いこと言ったのかな? 俺は暇だったのでその辺一体を捜索してみた。 廊下の壁には貼ったり剥がしたりの繰り返しだったのであろう掲示板や 消火栓しかなく掲示板に何か張ってあればそれなりに見ると言うことも出来るが 何も無さ過ぎて無意味に行ったり来たりを繰り返していた。 ふと見ると人影が!垣根さんが帰ってきたのか! そう思って駆け出してみると・・・見知らぬ男だった。 髪を腰辺りまで伸ばしておりそれを人束に纏めていた。 「待て!岸!」 俺はその声で何気なく隠れてしまった。 まあ、習慣といえばそうでもあるが・・・ 声からして峰志が呼び止めたのだろう。 「なんだ。」 「アレはどういうことだ?」 「アレ?ああ、別に納品が明日に伸びただけだ。」 「明日?じゃあ、アレは?」 「いちいち同じ日、同じ時分、そんなことをしていたら犬にかぎつけられるからな。 たまには罠を仕掛けるのに適しているんだ。」 「何も言わずにそんな事・・・」 「まあ、明日には来る。ちょっと朝は早いがな。」 「・・・・・わかった。」 う〜ん、どうやらこの二人はあまりかみ合っていないみたいだな。 とそんなこと考えてる間に足音がこっちに向かって来る。 俺は瞬時に隠れた。そこから少し覗くと岸の方がこっちに来ている。 そして、携帯を操っている。 その指の動きからして・・・『問題は解決した』かな? まだ打ってる様だが此処からじゃもう見ることは出来ないな〜。 とりあえずは・・・・峰志には隠し事があるってことか。 「おい!」 「わぁ!・・・・ビックリした〜」 振り返るとそこには垣根が居た。 「こっちの方がびっくりする!!たっく、あっちの方で居れって言っただろう!!」 「あ、わりぃー、トイレ行きたくなったんっす」 照れ笑いを浮かべつつ言った。 「まあ、いい。今日の分だ!」 そう言って垣根が俺の方にずいと突きつけた。 「あ、あれ?納品がどうとかって・・・」 「ああ、なんだか急遽明日になったらしい。猫の手も借りたいんだ!明日は早いからな!」 「へい、頑張りますわ」 明日か・・・・。 俺は、垣根が付き付けて来た袋を受け取ると 「じゃあ、行ってきやす!」 そう言って外に出た。 俺の後をつける奴は相変わらず居るらしい。 直行で行くわけにはいかないな。俺は、その辺を一周するようにして公園の方へ向かった。 入ってすぐに人とぶつかった。 「イタタタ〜」 俺は強く打ったケツを擦りつつふとぶつかった相手を見た。 ヤクシの帽子・・・・。 「くれ・・・・」 男はそう呟くように言った。しゃがみながらだったので辛うじて俺には聞こえた。 「森山刑事ですね。人目で分かりました。」 「なんだ?欲しいのか?」 会話にはチグハグだが監視がかなり近いところに来ている。 「くれ・・・・」 気付いたのだろう、ヤクシ帽子の男は、薬中の不利に変わった。 薬と金の引き換えをし、俺は小声で「後で連絡すると言っておいてくれ」と言った。 俺はその後公園を通って大通りに出たり路地に入ったり色々行った後にビルの中に入った。 廊下を渡っていると岸とすれ違った。 ・・・まだ居たのか・・・。 俺は悩んだが気付かれないように後をつけた。 ビル内では監視は無いからな。 岸はある一室でメールを打っている最中だった。 俺は岸の指が動くものを見ながら解読した。 『上手くいった。後は計画通りに実行する。』 ・・・・特殊文字かな? 文字を打つときと少し違ったものが入るせいでどうも検討がつきにくくなる。 男の癖に!!とか思いつつ俺はその場を去った。 よくよく考えれば自分もするけど・・・。 峰志の居る場所に向かうと居る場所のドアが勢い良く開いた。 ビックリしてその場に立ち竦んでいると 「なんだ!遅かったじゃないか!」 「すんません。お腹の調子が悪くなってトイレに駆け込んでたんっす。」 俺はそういいながらお腹を擦った。 「ふ、まあいい。こっち来い。」 手招きをされたのでそのまま入っていく。 腰を掛けるとすぐに峰志が言葉を発した。 「お前には、今まで監視がついていた。知っていたか?」 「え?そうなんですか?人の視線を感じた瞬間はちょっとはあったんですけど・・・ 気のせいかと思ってたんですが・・・」 「ふ、そうか・・・まあいい。今日はこれをバラしてくれ。」 そう言うと薬を付きつけた。それを受け取りつつ。 「え?これからですか?」 「なんだ?知らんのか?普通は白昼堂々と売ってる方が少ないんだ。 お前が可笑しいんだよ。」 「は〜、たまたま公園通ると匂いかな?薬中の方に出くわすんですよね〜。 夜だと何処に行っていいのやら?」 「はん、お前が物干しそうな顔でもしてんじゃねぇのか?」 「ははは、そうなんですかね?」 「な〜に、昼間っから売れるんだ。夜はもっと売れやすいぞ!」 「そんなもんなんですかね?」 俺は、踵を返して峰志に礼をしつつ退室した。 日はすっかり沈み辺りは暗がりになっていた。 今回は唐突だしな〜。ふと見上げると監視が解かれていた。 俺も信用されたってことか・・・。 俺はポケットから携帯を取り出し、履歴から「高波」の文字を探し掛けた。 「うん、あ、どうした?」 唐突だったのだろうビックリした様子で返事が返ってきた。 「高波さん、今暇なら飯でも食べながら報告したいんだが・・・」 「暇〜では無いんだが・・・まあ、仕方ない・・・で、何処で待ち合わすんだ?」 「もうすぐ、角蝶公園に入るから・・・・あ、ファミレスあったよね?」 「ああ、確か名前は、ヤクシだったか?そこだな。わかった」 高波は、そう言って俺の返事も聞かずに切った。 俺は、とりあえず、携帯をポケットにしまうとヤクシに向かった。 <<BACK  NEXT>>