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第五捜査 レストランにて
「いらっしゃいませ。一名様で?」
「人と待ち合わせているから二名だ。」
「かしこまりました。あちらの席の方へどうぞ。」
そう言って店員が奥の開いてる席を指差して礼をしつつ厨房へと向かって行った。
俺は、店員に言われた席に座りメニューを模索してるときテーブルに水が運ばれた。
すると、慌てた風にドカッと前の席に座られたので俺はメニューから目を離し前に座った高波の顔を見た。
「や、早かったね。」
「慌ててきたよ。で、なんだい?」
「待って!俺、腹ペコなんだ。」
俺は、そう言ってまた、メニューに目を向けた。
このレストランはかなり旨いで有名で、かなりの支店が点在している。
俺は、思い切ってステーキを頼んだ。
「おいおい、わしは払わんぞ!」
「な〜に、謙遜してるんですか〜。あ〜それと、コーヒー二杯に軽く摘まめるのはっと・・・」
「枝豆をくれ。」
「じゃあ、それでお願いします。」
店員が注文を繰り返し厨房へと去っていく。
「で、なんかあったのかね?監視があるんじゃ・・・」
「ああ、どうやら居なくなったみたい・・その代わり、夜勤が決まったみたい。」
俺は、そう言って内ポケットに隠し持った薬を高波にだけ見えるようにちらつかせた。
「なるほど〜で、今回はもういいのかい?」
「今回は、初の夜だから売れなかったで別にいいだろうし・・・」
店員があったかいコーヒーと枝豆を持ってきた。
「そんなんでいいのかい?」
「ああ、明日は、どうやら薬の積み込みが行われるらしい」
「何!それは本当か!」
高波は飲もうとしていたコーヒーを噴き出さんとばかりの勢いになった。
「まあ、待て今踏み込まれたらただの尻尾きりになるさ。」
「まあ、それではちょっと困るな〜」
「で、明日はどうやら本来のものとは違うものが届くらしい。」
「本来というと・・・それみたいなのかね?」
そう言うと俺がさっきちらつかせた内ポケットの辺りを指差した。
「ああ、多分・・。それを企んだ奴に上手い事取り繕うと思う。」
「ほ〜進展しそうだな。」
「ああ、」
すると、店員が出来たてのステーキを運んできた。
ステーキからはモクモクと煙が立ち、肉はジュージューといい音を立てていた。
俺は、早速ナイフとホークを持ち、一切れ切って食べた。
「う〜ん、おいしいな〜」
「おい、そんなことより・・」
「ああ、」
俺は、お腹が空いていたこともあり、思いっきり詰め込んでいたライスを一気に飲み込み話し出した。
「多分、これからは二つの勢力を行き来する羽目になると思う・・・・とりあえず、高波さんは、俺の父親って事にしておいて欲しい。」
「はぁ?ちょっと待て!わしはお前みたいな大きな子を持った覚えは無いぞ!」
「いや〜だから〜とりあえずだよ!とりあえず・・・俺の名前は勝山克好だから・・・」
「勝山・・・何?」
「克好だよ!!」
「ああ、克好ね〜。物好きな名だな〜」
「物好きってなんだよ〜」
ステーキにかぶつきながら上目づかいに高波を見る。
「勝山〜か・・・まあ、覚えておかないとな〜。」
「まあ、とりあえずだから・・・本職は〜」
俺は、周りを見回した。
「よし、商社の課長ね!」
「な、課長だと!部長位は!!」
「え〜、課長だよ!!」
「いや、部長だ!」
「は〜課長ね。」
「引き下がらん奴だな〜部長だ!!」
「分かった!部長補佐で!」
「部長補佐ではない!!部長だ!」
「なんでそこでこだわるんだよ!」
「わしは、公務員になる前は、部長だったんだぞ!」
「へ〜初耳〜。」
「ふん、だからわしは部長で無いと!」
「はいはい。分かりました〜部長ね〜。あと、人事部長って感じだね〜」
「じ、人事だと・・・そんな顔に見えるか?これでも営業のエリートだったんだが・・・」
「は!え、エリート!!全然見えないって!止めとけ!」
「まあ、部長の部署は、開発事業部だったがな。」
「へ〜人は、見かけによらないね〜」
「失敬な、わしを見かけで判断していたのか!」
「で、何でこっちに入ったの?」
「まあ、話せば長くなるんじゃが・・・・!!???何故、わしがこんな話をせなならん!!」
「え〜別に・・・話がそうなっただけで〜」
「とにかく部長でお願いする。」
「はいはい。」
「投げやりに聞こえるが?」
「気のせいですって!」
「何を笑っておる!!」
俺は、すっかり食べ終わったステーキ用ナイフとフォークで顔をガードしながら笑いまくった。
「部長にする代わりに・・・此処の代金払ってね〜!お・父・さん!」
「な、何を言い出す!!」
高波が顔を真っ赤にして怒ってる最中に逃亡を謀る様に去っていった。
俺は、それから、まっすぐに家路に着いた。
そして明日の準備を始めた。
あらかた準備が揃うと携帯が鳴った。
ディスプレイには「高波」の文字が躍っていた。
どやされるかな〜と思いつつ電話に出た。
「あ〜おほん。わしだ!高波だ!」
「いや〜名乗らなくても、分かってるし・・・」
「何?そうか!いつもの癖だ・・・笑ってくれ!」
「わはははは〜」
「何を笑っておる!!」
「いや、だって・・・笑ってくれって・・・」
「本当に笑う馬鹿がおるか!」
「ここに・・・」
「なんだ・・・馬鹿だったのか・・・」
「え?なに?納得してんの?」
「まあ、此処に領収書がある。」
「へ?領収書?」
「これを請求書として森山勝也氏に送ることとする」
「はぁ?何?妙な手回しして・・・」
「言葉では負けるからな・・・法的手段って奴だ。幸いわしには、金権に知り合いが居るんでな。」
「ややややや!!!止めてくれよ!!」
「ふふふ♪じゃあ、払ってくれるな!5,894円!」
「こ、細け〜な〜」
「さあ!払うな!」
「わ、わかったよ〜給料が入ったら払うよ・・・ところで、その中に、コーヒー一杯と枝豆とか入ってないよな?」
「ふふふ〜♪ご馳走さん」
「な!入ってるのか!!」
「まあ、その後にイチゴパフェをご馳走になったとわが子も喜んでおる!」
「ええ!!!な、それってあり?」
「な〜に、森山!お前は払うと言ったんだからこれは仕返しじゃ!」
「せ、セコー」
「じゃあ、給料日が楽しみだな♪」
「あ!ちょ、」
切られた。
は〜俺の給料が〜〜〜え〜と五千と・・・・なんだっけ?これなら、ワリカンにしとけばよかった〜。
それとも電話に出なければよかったのか・・・。は〜
俺は、落ち込みながらも明日に備え眠りについた。
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