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第十捜査 気分次第
病院を退院して数時間で戻ることになるとはな〜。
さて、結城はどこにいるのか?
「あれ?森山さん?どうしたんですか?」
ナースの光山さんが声を掛けて来た。
「結城先生にちょっと用事があって…」
「結城先生ですか?ちょっと待っててくださいね。」
そう言ってナースステーションに戻って行った。
少ししてナースステーションから出てくると
「結城先生は今医局に居たので呼び出しましたからもう少ししたら着ますよ。」
「光山さん!」
「は〜い。じゃあ、スイマセン」
「いえ〜有難う御座いました〜」
う〜ん、なんとも癒される笑顔だ〜。
「なに和んでるの?」
急に後ろから声を掛けられて吃驚しつつ後ろを振り返る。
そこには、どよ〜んとした結城が立っていた。
「・…どうしたんだ?」
「何が?」
「あの短時間でなんかやつれたって言うか〜」
「重労働だから」
結城の後をちょこちょこと着いて行くといつもの〜って言うと悪いかもしれないが、診察室に通された。
「さて、なんの用かな?」
いかにもダル〜って感じで目に氷を当てながら聞く。
「じゃあ早速だけど・…」
と言いかけたとき。
「先生!こんなところに居たんですか!すぐ来てください!!」
すると、ダル〜としていた結城が機敏に立ち上がり掛けて行った。
・・……何が起こったのかわからずただボー然と座っていた。
「あの〜」
我に返ったのは、ナースがおずおずと聞いてきたときだった。
「え?あ?スイマセン」
なんかよく分からないけどなんとなく謝った。
俺が出て行くと不思議そうにしつつも行動を起こしているようだった。
あ〜、どこで待とうかな?
なんとなくフラフラと出てなんとなく峰志を見かけた病室へと行って見ると病室はすでに田中ではなかった。
変わった?え〜と病室が変わるとすると?????
「あら?田中さん・…いえ、お知り合いですか?」
田中と言う仮名を思わず出して少し焦った感じで訂正しつつ聞いて来た。
「知り合いって言うか…」
「そうですか〜」
何かを悟ったように去っていく。
・・…何かあるのかな?
「あの!」
「はい」
満面の笑顔で返される。なんかここの病院って笑顔が癒しに〜ってそんなことを考えてる場合ではない!
「あら?よく見たら、森山さん?」
はい?
う〜ん???俺この人見たかな???
「私です!って私のことあんまり覚えてないかも知れませんけど…花田です。」
花田???あ!検査入院を強制的にされたときに朝ぶつかって親切に結城の場所を案内してくれた!
「あの時はどうも有難う御座います。」
俺は丁寧にお辞儀をした。
「いえいえ、今回も結城先生をお探しですか?」
「ごもっともで!」
クスクス笑いながら、
「仲がいいんですね」
「はぁ?」
「森山さんが入院しているとき結城先生がよく出入りしているようでしたので」
「え?ははは?仲がいいって言うか」
「あの時は、結城先生がどこに居るのかすぐ分かって便利でしたわ」
「へ?いつも医局とかにいるんじゃ?」
「そういう方も居ますけど…結城先生は結構あちこちに行ってますから」
「へ〜そうなんですか〜」
放浪型ぽいしな〜。
「多分、ここに今居ますよ」
そう言ってにっこりと笑った。
やっぱりいい笑顔だ〜。
そこは、ICU?
そのとき、扉が開いて出てきたのは結城だった。
「あれ?かっちゃんどうしたの?」
さっきとは打って変わって元気である。
あの時はなんだったんだ!!
「はなちゃんが連れて来てくれたんだ〜ありがとう〜」
「いえいえ、じゃあ私はここで〜」
お辞儀をちょこんとして去って行った。
「かっちゃん用事なんだっけ?」
「用事言おうとしたらお前が去ったんだ!!」
「あ・・…ごめんごめん」
自分のしたことを思い出したのか平謝りをする。
「飯くらい奢るよ〜」
と言って連れてこられたのが食堂だった。
すると凄い歓迎を受けた。
「ゆうちゃん!!どうしたの!あ?ご飯食べてる?ゆうちゃんの大好きなラーメンセット作るね〜」
が、俺じゃない歓迎。まあ、いいけど・…。
「あの俺は〜」
「はい、おまち〜」
そう言って有無も言わさずラーメンセットが二つ。
俺は決める権利は無いのか!!
「それにしても、ゆうちゃんが連れを連れて来るのは珍しいね〜。
もしかして、患者さん?あ〜ゆうちゃんはいい先生だから大丈夫よ〜」
……前にも来たことがあるんだけど・…って言おうとしたとき
「おばちゃ〜ん、日替わり頂戴!」
「はいよ〜」
・……なんなんだよそりゃ〜
「かっちゃんはラー油いる?」
「あ、いらない。ところで、いつもあーなの?」
「うん、楽しいだろ?」
「楽しいって言うか〜ってか結城ラーメン好きだっけ?」
「いや、その日によってのおばちゃんの気分次第でコロコロと変わってる」
ズズズズ〜〜〜〜。
「気分次第?いいのそれで?」
「うん。だってその日のベストの料理らしいしさ〜」
「はぁ?」
するとその疑問を解決するかのごとく
「おばちゃん!この魚焼き過ぎだよ!」
「そうかい?生魚は体に悪いからねぇ〜」
「たっく〜うぐ!!ちょ、これすっぱ過ぎだよ!!」
「いちいちうるさいね〜。少しは静かに食べれないのかい?」
・・……なんか凄くないか?日替わりだろ?
「多分昨日作り過ぎた分を回してるからね〜昨日の日替わりは美味しかったけどね」
ズズズ〜
「いいのかよ。おい」
「いいの、わかってる人ならまずおばちゃんのお勧めの品を食べるから」
「そうか」
「プハ〜美味しかった。かっちゃん話は?」
「!!!あ!そうそう、え〜と田中さんだっけ?」
「田中??あ〜なんかわかったの?」
「意識はある?」
少しの沈黙のあと結城はかすかな声で言った。
「残念だけど明日出直した方がいいかな?」
「明日?」
「さっき、少し急変したから明日にならないと起きないから」
「・・…はぁ〜」
「大丈夫〜俺の腕を信じろって」
そう言って立ってまで俺の肩を叩く。
「おばちゃ〜ん、ご馳走様〜」
「ゆうちゃん!ちょっと待っとくれ〜」
そう言って待っているとおばちゃんの手には袋がぶら下がっている。
「これ持ってお行き!今日は泊まりだろ?」
「ありがとう!おばちゃん」
俺は、結城と共に食堂を出た。
「じゃあ、俺は明日出直して・…」
くる〜って言おうとしたとき
「かっちゃん、あれしようや!」
あれ?・…ゲームか?
「いや、俺は帰って寝ようかと〜」
「じゃあ行こう!行こう!」
さらば、わが家〜わが寝床〜。
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