オリジナル小説へ
第十一捜査 再会
拉致られて・…いや、誘われてゲームすること数時間・…いや、数分でそれはお開きに近い状態になっていた。
「結城先生、松崎さんが急変です。」
「結城先生!」「結城先生」と何回も声を掛けられ去っていくためゲームは進まない。
俺は、ボーと待っているうちに眠気が出てうとうととしているときだった。
ガタ
と音が鳴ったので、結城が帰って来たのかと思って目を擦りながら顔を上げると
「かっちゃん、何をしているの?」
!!!!???????
声にならない声とはこのことか!と思い知らされるような声が出た。
目の前には、まっちゃんが立っていた。
唾を飲み込みようやく声になる声になった。
「まっちゃん!なんでこんなところに!」
「いや〜かっちゃんらしいのを見かけたから…」
「大体この時間に何しに来てるんだよ〜」
「ちょっとね〜」
沈黙が流れた。
まっちゃんには、聞きたいことが山ほどあるが何から聞いてよいのやら??
「かっちゃん?」
「え?はい!」
先手を食らって吃驚してしまった〜。
「ここには来ない方が良いよ。」
「へぇ?」
思わず間抜けな言葉が出てきた。
その返事を聞く事もなくまっちゃんは出て行ってしまった。
どういう事だ?なにかここにあるのか?
前にちょっと怖いことがあったことを思い出し俺は毛布を頭から被った。
カチャと音が鳴り、結城が入ってくると
「何?かっちゃん怖いの?」
「・…別に」
精一杯の意地を張った。
「怖いんだ〜」
結城の奴楽しんでやがる。
「この病院の七不思議教えてあげようか?」
「け、結構です。」
声が思わず震える。
「とある病室の一角で〜」
「わ〜聞きたくない!!」
結城の奴〜〜〜覚えてろ〜〜〜。
チュンチュン
朝の鳥のさえずりが聞こえてきた。
あの後気絶に近い状態で寝ていたのかベットの端の方で目が覚めた。
体がダルい。よしまた寝よう。
ガラ
「森山さ〜ん」
え?なんで?
ナースが入ってきて・・…少しいや〜な予感が・…
「じゃあ、行きましょうか〜」
思わず、首を横に振る。
「大丈夫ですよ」
にっこりと微笑まれる。
ヤバイこのままじゃあ〜
思わず、その微笑に負け人間ドックをする羽目になった。
はぁ〜なんか罪な笑いだよ・…ってか結城のやろ〜
「なんだ、貴様のその態度は!」
廊下で待っていると一際大きな声が聞こえてきた。
見ると…あ〜確か名前は〜
「沙木沢先生!」
ナースキャップにはピンが刺さっているナースが沙木沢をこそこそと室内へと招き入れた。
俺はなんとなく野次馬根性でその室内の近くに立って声が聞こえないものかと思ったが…さすがに声が聞こえなかった。
やれやれ〜って思いまたさっきまで座っていた席に座った。
「森山さ〜ん」
ナースに呼ばれて中に入った。
そこには医師らしく座った結城が座っていた。
「え〜と、どうでした?」
「不意打ちです」
「まあ、健康かどうかはやっぱり知っておくべきだと思うし〜ね〜」
「酷すぎです」
おいおいと泣き真似をする。
「で、結果ですが・…、言いにくいんですが…」
「ごくり…」
「癌です。」
「ガーン!!」
クスクスと笑い出す。ナース。
「何やってるんですか!先生」
「あ〜いつもの恒例だからね〜」
ナースが居たなんて不覚。
「あ、そうそう、かっちゃん…ちょっと運動不足で肥満型になってるから気をつけてね〜。」
「マジですか!」
「マジです!」
ちょっと凹む。
「かよちゃん、あ、すいません。」
ナースが入ってきたかと思うと俺の顔を見て焦ったようにぺこりと挨拶をした。
思わず自分もお辞儀をした。
「かよちゃんこっちはもういいから」
「そうですか?すいません」
結城に促されるように、かよちゃんともう一人のナースが去って行った。
「そういえば、あの〜さ、さ、」
「沙木沢?」
「そう!そいつがさ〜なんか廊下であいつが叫んでたんだけど…」
「?珍しいな〜。五月蝿く言うときは大体医局なのに…」
「そうなんだ〜」
「あ、それで田中さんの件だけど〜」
「田中?」
「あれ?忘れてるし…何しにここに来たの?」
「そうだった!!結城に振り回されてたからすっかり忘れてた〜」
「振り回したつもりは無いんだけどな〜」
田中・…って名前で出てこなかったけど、峰志のことだったよな〜そういえば・…
「で、会えるのか?」
「うん、本当は駄目だから〜ハイこれ!」
そう言って結城の差し出したものを見ると、白い服?
「なにこれ?」
「研修医が着る服。あとこれ、メガネで髪の毛を上げまくったらたぶんわかんないよ」
誰にわからないかちょっと思い当たったのであえて聞かないでおこう。
「じゃあ、そういうことで着替えた着替えた!」
着替えた後、結城と一緒に峰志のいる場所へと向かっていた。
「あれ?結城先生その方は?」
「最近入った新入りだよ。」
「そうなんですか?ご紹介がなかったようですけど?」
「ここの病院じゃないからね〜」
「そうなんですか〜じゃあ、私はこれで〜」
「ご苦労様〜」
俺はただお辞儀することに専念した。
結城が言うにはとにかく影のうす〜い奴を演じろってことだったのでそんな感じに・…
本当に影が薄いとはどんな感じなのかよくは分からないが…。
そうこう言ってる内に辿り着いた。
メガネを取り髪をとりあえず元に戻した状態で峰志にあった。
結城には席を外してもらおう。
「結城」
「うん?ああ〜何?え?居ない方がいいとか言うの?」
「その〜そうなんだけど〜」
「わかったよ〜その辺で戯れよく〜」
た、戯れ・…まあ、これでやっと席を外してくれた。
「峰志さん」
すると峰志が少し眉間に皺を寄せて目を開けた。
「・…勝山?な、なんで…うっ」
「体に障るからそのままで…」
「すまん。まさかここにお前がいるとは思わなくてな…」
「俺もびっくりしましたよ。」
「薩摩さんが心配していましたよ。」
「・・…あいつか・…何か探していただろう?」
「え?そ、そうっすけど…」
「・・…」
薩摩にも何かありそうだな〜。
「勝山。」
「はい。あいつには気をつけろ」
「・・…薩摩さんですか?」
こくりと頷く。
「あ、そういえば、薩摩さん探し物してましたよ?」
「・……あれか…」
「あれ?」
「勝山、俺の部屋はわかっているな?」
「あの棲家っすよね?」
「そうだ、その机の下に・…あと、ママにも…グフ」
「峰志さん!!」
「頼む。絶対に・…絶対に…」
俺はナースコールを押してナースを呼んだ。
すぐに、結城が駆けつけた。
俺はこっそりそこから抜けて廊下で待つことにした。
ママ・…??もしかして前に連れて行かれた?
ウィーン
ICUの扉が開いて結城が出てきた。
「結城」と言おうとしたら結城が俺の肩を叩いて誘導していった。
小さな個室に通された。
二人で腰掛けると、結城が少しため息を吐いて俺に向き直った。
「田中さんの容態が悪いんだ。」
「え?でも…」
「それで、出来たら家族を呼びたいんだけど…」
「俺じゃあわからないから調べてくるよ。」
「あてはあるの?」
「多分・…」
「じゃあ、分かったらすぐに知らせてくれる?」
「は、はい。」
結城はいつものおちゃらけた感じは無く、かなり厳しい表情で言われて少しビビリ気味で返事をした。
いち早く調べて来いのお達しで俺は、さっそうとキャバレーの方に向かっていった。
<<BACK NEXT>>