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第五捜査 カツ丼
取調室には何十回くらいだろうか?かなり来たが・…
森山勝也として来たのはこれが初めてだ。
いつもならたちの悪いチンピラになるが・…
どうしたものか。
「素直にここに来たのに黙秘とはな」
俺はそればかりを考えて未だに黙ったまま。
「あの・…」
俺がしゃべりだしたので身を乗り出す警察達。
「お腹空きません?」
「あ〜」と呆れたため息が聞こえてきた。
「出前を取ろう、カツ丼でいいか?」
「え?やっぱり取り調べにはカツ丼ですよね〜」
「・・…先に言っておくが自腹だぞ?」
「……え?」にっこり顔が少し引きつるのがわかる。
やっぱり、高波と一緒なのか〜と少し落ち込む。
「どうするんだ?」
「待って!財布と相談するから・…」
財布の中には申し訳なさそうに千円札が一枚入っていた。
「安いのであれば!」と力んでみた。
「言っておくが、奢って…」
「奢れません。」
言いかけたことが分かりその前に言った。
「だろうな」とはにかむようにしながら一人が出て行った。
「で、だ。話してくれるな?」
「・・…腹が減っては戦はできぬ!」
・・…あれ?
普通ならここで「どこの武将だ!」とかなんか突込みが来るはずなのにな〜。
辺りは静まり返った。
カチャと音が鳴り、刑事が入ってきた。
「辰己警部、ちょっと・…」
さっき注文に行ったはずの男が辰己を呼び出し、外へと出て行った。
事実上、俺一人になるのかと思ったら入れ替わりに違う警官が入ってきた。
男が俺の目の前に座るとにっこりと笑って
「あの・…何かじたんでずか?」
「いえ」
「その・…なんでぇここに居んのか私には分かりまぜんげど…。
やっだことは素直に認めるのがいいど思いまず。」
・……なんかイントネーションが違うなこの人。
「その・…悲じむ人が・…人が・…居るんでずから〜」
そう言うと目の前で泣き出した。
「え?あ・・…大丈夫ですか?」
「大丈夫でず!私は…私は・…」
明らかに大泣きする光景におろおろするばかりであった。
そのとき、カチャと扉が開き辰己が入ってきた。
すると俺の前で泣いてる男を見てうんざりそうに
「あ〜、こいつは解放だから、」
その言葉に驚いたのは俺だった。
「解放?ってことは帰っていいの?」
「ああ、お迎えが着てるぞ」
「迎え?」
辰己の後ろの方で見える美穂の姿が見えた。
警察を後にして歩いて帰って行く。
「勝也?」
「何?」
「なんで捕まってるの?」
「・・…いや、あれは捕まるって言うよりも…」
「よりも?」
「事情聴取!俺はやってませ〜ん」
「あははは〜」
ドス
背中に何かが当たる。
何?
「かっちゃん、君のマンションで待っててあげるよ」
この声・…。まっちゃん?
「勝也?」
不思議そうに問いかける美穂の声。
俺の背中から美穂に向かうまっちゃんの姿が見えるが動けない。
「・…美穂…にげ…」
俺は力なくその場に倒れた。
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