オリジナル小説へ
強引な男
辺りは、一面木々に覆われていた。
な!さっきまでの村は?
辺りを改めて見回してみても見渡す限り村らしい痕跡は見れない。
では、俺が居たところは幻術か何かで見せられた幻?
カァァァァ
カラスがその時鳴くので俺は空を見上げた。
さっきまでは、夕日だったのだろう。少しの明かりを残して空が青黒く染まっている。
く、このままだと時期に暗さを増す・・・・・・ヤバイな。
隣町の居る奴等からの話だと、夜になるとかなりの霊が人を襲うらしい。
そんな奴等に構わないようにさっさと終わらせたかったのに・・・。
俺は、とりあえず道らしい痕跡の残る道を探し歩き出した。
フォーフォー
梟(ふくろう)が鳴き出すくらいの暗さになったが未だに道の痕跡すら見つからない。
仕方なくそのまま歩いていると・・・
「うぁぁぁっぁ!!!」
人の叫び声が聞こえた。
俺は、声のした方に駆け出して行くと、男が白い布に囚われている。
布は意思を持ったように木々の枝に絡まりつつ男を上に上にと引きずり込む。
俺は、口々に術を唱えながら近付き布に向けて印を結んだ状態で錫杖を振る。
チャリンチャリン
その瞬間に布が空高く逃げ出す。
「逃がしたか」
男の方に振り向くとへらへらとした顔で
「どうも有難うごぜえますだ〜お坊さん」
身なりからして農家の人だろう。
「この場所は、霊の潜む場所だと噂されていたが・・・・なぜ出てこられる?」
「は〜、それは・・・・」
口ごもる男は、突拍子もない事を言い出す。
「そうだ!お坊さん!お礼に泊まってくだせぇ〜」
「いや、私は結構・・・」
しかし、その言葉の有無も聞かずに男は俺を連れてある一軒家の所に連れて来られた。
男の身なりからは考えられないくらいの豪華な家だった。
「ここは・・・」
「へぇ〜おらのうちでごぜぇます」
玄関を入ると妾だろうか?女の人が出てきて口々に「お帰りなさいませ」と言っていく。
へらへらとした面である一つの部屋に通された。
そこには、テーブルに一面に食べ物がずらりと並べられていた。
「ささ、どうぞ」
部屋に通されてすぐに扉を閉めた男は、俺を席に強引に付かせる。
俺は、仕方なく席に着き、男の差し出す酒を飲む振りをしていた。
周りを見回すと明らかに男が持っているには可笑しい家だと改めて見ていると
窓の影が異様に明るさを持っていることに気付いた。
俺は、男に気付かれないように印を結び小声で呪文を口ずさむ。
すると窓の明かりは、ほんのり白から段々青さを増していく。
俺は、呪文を早口に捲くし立てた。
「ぎゃ〜〜〜〜〜!!!!あぁぁぁぁぁ〜」
悲鳴は思わぬ方向から聞こえた。それは、男から発せられた。
俺は、男の方に印を向け錫杖を自分の前・・・・男の前に出した。
男は、見る間に爛れ多分元の姿に戻ったのだろう。
すると、辺りは、廃墟に変わっていた。
さっきまでの酒は、血生臭い匂いを漂わせ豪華な飯は、
百足(むかで)や蚯蚓(みみず)に変わっていた。
口にしていたらと思うとゾッとした。
<<BACK NEXT>>