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子守唄
廃墟を抜け出すと、そこは最初に見た廃墟だった。
これは、一体・・・・。
自分が何かに化かされている気分だった。
いや、現に化かされているのだろう。
俺は、井戸のあるであろう方向へと歩いて行く。
がさがさ
枯葉を踏む音が静かな廃村に響き渡る。
やっと井戸に付くとそこは無残にも壊された痕跡がある。
いや、壊されたというより・・・・壊れた?
不意にそんなことを思っていたら女の声が聞こえた。
何かの子守唄か?軽く口ずさむその方向へと向かって行く。また、騙されるかもしれない。
そう思ったがなんだか聞き慣れたようなこの曲にどうしても惹かれてしまう気がする。
ザーーーーーー
滝の音が聞こえてきた。
凄い雑音なのに何故か女の声は透き通ったようによく聞こえる。
俺は、少し木の陰に隠れ女を見た。
滝の滝つぼに足の膝の辺りまで浸かり滝の飛沫(しぶき)を受けて気持ちよさそうなそぶりをする。
俺は、その様子をじっと見ていた。すると、錫杖が小刻みに揺れ出す。
錫杖には師匠に予め吹き込んで貰った法力が込められている。
やはり、あの娘も・・・・
俺は、印を結び、大きく一息を付いて娘の方に向かって術を放つ。
その術は不意だったにも関わらず女は水の壁を作った。
俺は、瞬時に体勢を立て直し、術を・・・・放とうとしたとき水の壁が消え、
そして娘も消えていた。俺は、その滝つぼを覗き込む。
もう、錫杖は揺れていない。
・・・・逃がしたか・・・。
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