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滝つぼ
梁はそれでもついて来る。それも口々にしゃべりながら・・・
「俺さ~この道初めてでさ~しかも前の地図だったんだわ!
近くに村があるからって思ってそのまま歩いてたらさ~廃村してやがるってぇ~んで
結局その次の村に行こうと歩いてたらさ~
間違って野犬の尻尾を踏んじまってかなり大変だったんだわ!で、
やっとの思いで振り切ったらさ~あれだぜ~死ぬかと思ったよ」
口々に発せられる梁は、それなりに意図があるとは思えなかった。
「そういや~あれって法力って奴ですかい?阿臥?」
不意に振られた話は話す気など無い。俺は、ただ黙々と歩くのみ。
「俺ぁ~出来たら仙人になりたかったんだけどさ~仙骨ってぇ~の?
なんかそれが俺っちには無いらしくてさ~道士止まりならってぇ~んで
一旦諦めて嫁さ~貰ったんだけどさ~。これがまた気が強い奴でさ~」
そんな話がされてる間に目的の滝にたどり着いた。
「おぉ~!!ちょうど喉渇いてたんだ~!」
梁はそう言いながら滝つぼの水を掬う。
すると梁は、手から引きずられるように滝つぼに落ちた。
俺は、慌てて梁の足を攫もうとしたが遅かった。
梁は見る間に奥に落ちていった。
俺は呪文を唱えそのまま滝つぼに落ちた。
水は綺麗で、月明かりくらいでもかなりの明るさが入ってくる。
辺りを見回したりもっと奥なのか?そう思いながら下に潜って行くが一向に梁の姿が見えない。
息が持たずに水から這い上がる。
はぁはぁはぁ
息を整えながらもう一度滝つぼを覗くが梁の姿は影も形も無い。
引きずり込まれたな。
俺は、滝つぼの近くに錫杖を立て座禅を組んで静かにお経を唱えた。
梁が死んだ・・・・五月蝿い奴だったがこれも何かの縁。
そう思いながら経を唱えていたら滝つぼの水が次第にねじれ呻いている。
俺は、不思議に思いつつもお経の声を強くした。
呻きは叫び声に変わり水はあっという間に盛り上がり滝の水をも飲み込む勢いになっていった。
錫杖はこれまでに無いほど震えていることを今気付いた。
音が聞こえないほどこの叫び声に似た音は激しさを増していた。
その水は何かの糸が切れたように水が上へといっていた力が急に消え水が落ちてきた。
私は、慌てて錫杖を握りその場から逃れようとすると足に何者かがつかんだ。
そのせいで私は空になっていた滝つぼの中に落ちた。
「へへ~助かるかと思ったんだげんど・・・・ダメか~」
!!この声は・・・・・・梁?
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