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梁三子(りょうさんし)
ピチョンピチョン 水が岩に当たる音が聞こえる。 私は、重い瞼(まぶた)を開き辺りを見回す。 岩の端の方に転がっている。足や服の感じから梁であることが分かった。 俺は重い頭を一振りして梁の元へと進んだ。 ふと上を見上げるとそこには大量の水が流れていた。 不思議なことにここに流れることは無くそして、ここには空気がある。 「あ、阿臥」 不意に呼ばれ俺が振り向くと同時ににへら〜と笑った顔に少し暗い影をさしていた。 それはここが暗いせいもあるのだろうが他にも理由があるように感じた。 「あれ?阿臥!!あの杖は?」 梁に言われ手にしていたはずの錫杖が無いのに気付き辺りを探索するがあるはずのものが無かった。 「無いな〜どこさいったんだべ?」 一緒に探してくれる梁は凄くのんびりしたように聞こえる。 あれには法力が込められてるから霊や妖怪とかは近付くことは出来ないが・・・・ チャリン 錫杖の音が聞こえた。 俺はその聞こえた方へと走った。 「阿臥??」 遠くの方で梁の声が聞こえてきたと思ったら横から声がした。 「見つかったべか?」 驚いて思わず止まった。 「??どうしたべ?」 「あ、いや、なんでもない。」 走りが達者なだけだろう。そう思いなおして俺は、錫杖の音が鳴った方向へと走って行った。 チャリン 錫杖の音が大きく聞こえる。 チャリンチャリン 錫杖を掲げてどこかに行こうとするものが居た。 「待て!」 俺は、そう思わず言った。 「それをどうする気だ!」 その者は振り返ることなくただ歩む。 「聞こえぬのか?」 そう説いても止まりもせずにただ歩む。 「あんさん!耳といーんですかい?」 梁の一声でピタリと止まり振り返った。 その者は・・・・・・顔が無かった。 妖怪!!いや、妖怪が錫杖を持てる筈が無い! 「あんさん、そりゃ〜このお坊さんのもんだべ。返すべ?」 梁は何事も無いように坦々と語る。 俺は思わず梁を見ると不思議そうな顔で 「なんですかい?阿臥?」 「あれは、妖怪だ」と呟くように答えると噴出したように笑う。 「え〜ただの人ですよ〜ははははっは〜」 笑った顔は、だんだんと緩みが激しさを増す。 「おい!梁!!」 笑いが大笑いに変わり全然止まらない。 「梁!」 俺が梁の肩をつかみゆさゆさと揺らしているとチャリンと音をたてる音が遠くに聞こえた。 さっきの奴がこの状態の時持って行ったのだろう。 梁と居るべきか悩んだ。錫杖が無くてもどうにかなるかもしれない。 ふとそう思ったが、俺は梁の首根っこをつかんだまま錫杖のあるであろう場所へと向かった。 「どこへ行きなさるんだべか?」 不意に自分の耳のすぐ近くで声がして思わず、梁を取りこぼし一旦引いた。 鈍い音と供に聞こえてくる声は・・・梁の物だった。 「酷いな〜。なんで落とされたんですかい? 怖いなんてあんさんには勿体無い感情ではないですかい?靖臥・・・・」 手招く感じで近付いてくる梁は、どこか可笑しい。 いや、これは本当に梁で有るかと問われると悩むくらいだ。 「何を悩んでおいでなんですか?私ですよ・・・梁三子(りょうさんし)ですよ・・・」 !!!???梁・・・清梁では無いのか?それに梁三子という名は聞いたことが無い。 俺は、困惑したまま岩場を背に悩んでいた。 梁三子は、俺の方にゆっくりと近付いてくる。 「靖臥・・・なぜそんなに悩むことがあるんだい?私は、お前さんの・・」 その瞬間梁三子の首がごとりと落ちた。 その首は、ヒヒヒ〜〜〜と不気味な笑い声を発しながらそのままフッと消えた。 梁三子・・・・清梁ではない・・・。では、清梁は? <<BACK NEXT>>