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再会
チャリン
錫杖の音にふと我に返った気がした。
また化かされたのか?
俺は、そう思い立ち錫杖の音につられるがまま向かった。
錫杖は、中に浮いてチャリンチャリンと音を鳴らしながら暗い穴の方へとひとりでに歩いているようだった。
可笑しいな。アレは、霊や妖怪の類(たぐい)は触れないはずだ。なのに・・・
俺は、その錫杖が化かしであると感じて他を当たろうと思い立ち錫杖を後にしようとした。
「靖臥・・・・どこに行きなさる?」
梁三子の声が聞こえた。
「お前等妖怪か幽霊などと遊んでいる暇は俺にはないんだ!」
俺は、印を結びそして術を唱えようとした。
「ここでは、術をお使いにならない方がいい、ここは、妖術のおかげで持っている場所だ。」
その言葉を聴き俺は、術を唱えることに躊躇した。だが俺はそれでも印を結んだ。
「へへ〜〜〜こりゃあ、見物だべ〜」
ケラケラと生首は笑う。俺はそれを払いのけ座禅を組んだ。
お経を唱えるたびにピチャピチャと音をたてて水が滴り落ちてくる。
それを聞きながら俺は錫杖の主を見据える。
何も見えない。そして錫杖も相変わらず宙を浮いている。
「ケラケラ、無駄だべ〜。無駄無駄。」
梁三子がそう高らかに宣言した。
俺はそれを無視して経を唱えようとすると・・・
「阿臥!!!!」
「!!!!!!!!!!!??????」
聞いたことある声だった。
「阿!うわ、ツメテェべ〜〜〜。阿臥〜〜〜〜」
口々に文句をタラタラ言っては俺の名を呼ぶ。
「ひゃひゃひゃ〜〜〜〜〜、靖臥、アレは誰だろうな〜」
不気味な笑いを高らかに掲げながら言う。
「阿臥?そこに居るんべか?」
梁三子が俺の名を叫んで笑っていたので梁がこっちに気付いた。
「あ〜やっぱり、阿臥」
その姿は想像したとおり梁だった。
「無事だったのか?」
「ちょっと擦りむいちまったけど・・・・だいじょ・・・・・・・イテ〜〜〜」
万歳とした拍子に壁に刷り身体をくの字に曲げた。
大丈夫には見えないが・・・・。
「うひゃひゃひゃ」梁三子が不気味な笑いを浮かべている。
それを見て睨んでいると
「阿臥?どこを見てるんですかい?や、まさか・・・や〜脅かさないでくんせ〜」
口々に言う梁を見た。その顔が自分でも分かる位に驚いていた。
「え?本当にそこに居なさるんですかい?」
梁がそろそろと梁三子に近付いていくかと思えば少し違う方向へと歩く。
本当に見えてないらしい。
「見りゃ〜出来ますまい。出来ますまい。」
そう言いながら梁三子の姿が消えていく。
やっとあの嫌な笑いを聞かないで済む。
ホッとする気持ちになろうとしたとき「チリン」と錫杖の音が聞こえた。
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